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2009年1月 5日 (月)

夢に見たCD化!「アルプスの少女ハイジ」

 2008年のアニメサントラ界最大のトピックは、この1枚ではないでしょうか。

 世界名作劇場の原点というべき作品『アルプスの少女ハイジ』。音楽集リリース(復刻)の希望が多かったにもかかわらず、ながらくCD化されませんでした。
 それがついに実現! 1974年の放映から34年、コロムビアのLP発売(1981)から27年、待った甲斐がありました(涙)。

 コロムビアで「世界名作劇場メモリアル音楽館」の仕事をしながら、「ほんとは『ハイジ』を出さないと、このシリーズは完成しないんだよなぁ」と思っていました。実のところ、私も一時『ハイジ』のサントラを企画し、音源も取り寄せて、発売の準備をしていたことがありました。それが、諸般の事情でかなわず涙を呑んだ記憶があるだけに、今回のリリースは感慨もひとしおです。

 発売はコロムビアではなく、Rambling Records。サントラファンには懐かしいSLC(Soundtrack Listeners Communication)の流れを汲むレーベルです。
 通常版と限定版の2タイプがあり、通常版はCD1枚、限定版は2枚組、と大きく仕様が異なります。
 通常版は、コロムビアからリリースされた「TVオリジナルBGMコレクション アルプスの少女ハイジ」の復刻に、フルサイズ主題歌・挿入歌を加えた内容。限定版は未収録BGMを加えて構成を一新した、熱心なファン向け仕様です。以下、限定版を想定して紹介します。

 構成と解説は早川優さん。限定版にはオールカラーブックレットがつき、詳細な作品解説と音楽解説が付されています。

 DISC1の聴きどころは、マンドリンが奏でる岳夫節にしびれる「アルムの山へ」の「荷馬車にゆられて」、アルプスの大自然が目にうかぶ「山のけしき」の一連の曲、今回はじめて商品化された「白銀のアルム」、心がほっと温まる「またあした」など。ことに「白銀のアルム」に収められた「雪がふる」は劇中でも雪降るシーンに流れていた曲で、静かにじんわりと胸に染みてくる名曲です。
 挿入歌「夕方の歌」「アルムの子守唄」のTV用1コーラスヴァージョンもうれしい初商品化。
 DISC2では、弦のアンサンブルが優雅な「フランクフルトへ」、ハイジの想いをリリカルな旋律が表現する「想いは遠く」、ハイジとクララのゆれる心を描く「ふたつのこころ」など。なかでも「想いは遠く」の3曲目に収められた「おんじの夢」はハイジBGMの精華ともいうべき名曲でしょう。
 主題歌のスペイン語ヴァージョンはオケ、ヴォーカルを新録して再現した珍品。スペイン語になってもまったく違和感がないのは、「キャンディキャンディ」フランス語ヴァージョン同様、さすが渡辺岳夫メロディです。

 残念なのは、BGMのマスターテープが一部散逸して、第1話をはじめ初期の話数で使われた曲の大半が行方不明なこと。それは、私が準備していた段階でもすでに同じ状況でした。1話冒頭でアルプスの山々の素晴らしい美術を背景に流れるホルンの雄大な曲や、ハイジが荷馬車に乗ってアルムの山へ向う場面の曲も未発見になっています。
 幸いなことに、行方不明曲の一部はコロムビアからリリースされた「TVオリジナルBGMコレクション」に収録されていたので、そこから復刻されています。

 ただ、「TVオリジナルBGMコレクション」の構成にはちょっと問題がありました。番組後半以降に録音されたBGMが初期エピソードのブロックに収録されているので、音楽とエピソードをまるごと記憶している人には違和感があるのです(解説にも誤りがあります)。たとえば「アルムの山へ」に含まれる「おだやかな日」、「山と友達」の「ユキちゃん」、「陽ざしの中へ」に含まれる全曲などが、番組後半、ハイジがフランクフルトからアルプスに帰ってきて以降のエピソードから使われた曲です。ハイジの音楽マスターには混乱があり、解説で「第2回録音」と記された曲の大半は、おそらくは第4回以降の録音曲であると考えられます。
 このあたりの事情は、私が『ハイジ』完全版を作ろうとしていたときにかなり慎重に調べました。そのときは「TVオリジナルBGMコレクション」を完全に解体して構成しなおすことを考えていたのですが…、やはり初期録音曲が散逸していることがネックで、悩んだものです。今回の早川さんの構成は、旧盤の構成の間にメロオケや初商品化曲をはさみこむことで、うまく違和感を最小限に抑えるよう考えられています。楽曲解説でも、あえて「どの場面で使われた」という紹介を廃したのは、渡辺岳夫の音楽を純粋に楽しんでもらうための配慮でしょう。

 ブックレットには、渡辺岳夫が『ハイジ』の音楽の想い出をつづった貴重なテキストが復刻掲載されています。
 渡辺岳夫は、この作品のために自費で2度にわたりスイスまで取材に出かけました。CDには収録されていませんが、現地で録音したヨーデルやカウベルなどの民俗楽器による曲もテープには残っています(本編では一部が使用されています)。
 「『ハイジ』が作曲家・渡辺岳夫の音楽が変わる転機になった」というのは私がよく言う話です。当時の渡辺岳夫は『巨人の星』や『アタックNo.1』『魔法のマコちゃん』といったアニメ作品、また時代劇などで活躍していました。独特の「岳夫節」はそのころからのものですが、サウンド的には、心情描写に重きを置いたどっしりした音が多い。しかし、『ハイジ』以降、渡辺岳夫の音楽はよりシンプルに洗練され、ヨーロッパ風の香りが混じってくる。その特徴は『ハイジ』のあとに手がけた『魔女っ子メグちゃん』に顕著です。

 情感をリードするドラマチックな音楽から、キャラクターのそばにそっと寄り添うような自然な音楽へ。その作風の変化が『ハイジ』の音楽から聴こえてきます。

 渡辺岳夫の真の代表作と呼べる『アルプスの少女ハイジ』の音楽を集大成した待望のリリース。ぜひこの機会を逃さずに入手して聴いてください。劇中で使用された曲はほぼ網羅されているので、熱心なファンも名場面を思い出して懐かしく聴けるはず。そんなに熱心な『ハイジ』ファンでないという方も、渡辺岳夫のすばらしい音楽の世界に触れてみてほしいと思います。

 欲をいえば「カルピスまんが劇場」のタイトルに流れる短い曲も収録してほしかったところですが、またの機会を待ちましょう。
 『ハイジ』には、ほかにも冬木透先生が編曲した「管弦楽と室内楽による組曲 アルプスの少女ハイジ」、同じく冬木編曲による「女声合唱によるアニメファンタジー アルプスの少女ハイジ」という作品もあります。いつの日か、未発見音源も含めた『ハイジ』の音楽の全貌が商品化されることを心から祈っています。

アルプスの少女ハイジ オリジナル・サウンドトラック [限定版]
 DVDトールケースのデジパック仕様。2枚組。

 : アルプスの少女ハイジ オリジナル・サウンドトラック [2枚組限定版]

アルプスの少女ハイジ オリジナル・サウンドトラック [通常版]
 こちらは普通のCDと同じジュエルケース仕様。

 : アルプスの少女ハイジ オリジナル・サウンドトラック [通常版]

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コメント

 やっとですネ。まさに「待ちに待った」という感じです。
 マスターの散逸は残念です。私は『ワイルド7』のBGM集も首を長くして待っているのですが‥‥(^^ゞ

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