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2009年1月

2009年1月31日 (土)

手塚アニメと音楽と 「手塚治虫 漫画、音楽そして人生」

 1月30日に放送されたNHKプレミアム10「手塚治虫 漫画、音楽そして人生」を観ました。
 手塚治虫生誕80年・没後20年記念番組です。

 手塚治虫と音楽に焦点を当てたユニークな企画。
 NHKならではのマニアックな内容にうなりました。

 NHKと縁の深い冨田勲先生は大フィーチャー。『ジャングル大帝』『リボンの騎士』の話などが紹介されました。そして、番組クライマックスは大阪大学交響楽団が冨田勲の指揮で「ジャングル大帝」テーマ曲を演奏するミニコンサートの映像。大阪大学が手塚治虫の母校であることから、この企画が実現しました。楽団の学生さんたちは得がたい体験をしましたね。

 また、『W3』『悟空の大冒険』『ふしぎなメルモ』の宇野誠一郎や、80年版『鉄腕アトム』の三枝成彰、今年公開される映画『MW』の音楽担当・池頼広、さらには、昨年11月に発売されたアルバム『手塚治虫 その愛した音楽』の発案者である坂本龍一まで取材をしているのはさすが。

 一連の虫プロ作品はもとより、『マグマ大使』、『海のトリトン』などのアニメ作品、実写作品の映像もたっぷり登場し、手塚作品と音楽のかかわりを知る上で、とても興味深い、見ごたえのある番組でした。

 時間の都合からか、惜しくも、紹介されなかった作品もあります。
『バンパイヤ』『ミクロイドS』『三つ目がとおる』、NHKで放送した『青いブリンク』も。

 もっとも残念だったのは、『火の鳥2772』『ブレーメン4』の樋口康雄さんが登場しなかったこと。
 樋口さんは手塚治虫が冨田勲に次いで絶大の信頼を寄せていた作曲家です。
 よい番組だっただけに、この点だけは惜しい。画竜点睛を欠いたと言うべきところでした。

 とはいえ、アニメ・映像音楽に関心のある方には貴重な番組。
 2月7日に再放送があるようなので、見逃したかたはぜひ!どうぞ。

手塚治虫 その愛した音楽
 手塚治虫が生前愛聴していたアナログレコードから、娘・手塚るみ子が選曲したクラシックや映画音楽のコンピレーション。手塚治虫が創作の友に聴いていた音楽を聴くことができる。ブックレットには冨田勲の寄稿や手塚治虫所蔵レコードリストなども。

 : 手塚治虫 その愛した音楽

2009年1月28日 (水)

チャーリー・コーセイにはアウトローが似合う…「ルパン三世のテーマ」

 チャーリー・コーセイが『ルパン三世』主題歌を歌うミニ・アルバム「ルパン三世のテーマ」を聴きました。
 2005年発売のセルフ・カヴァー・アルバムです。

 惹句では「33年ぶりのセルフ・カヴァー」なんて書かれてますが、そんなことはない。これまでにも同様の企画が何度かありました。山下透プロデュースの「LUPIN THE THIRD TAKEO YAMASHITA ”Rebirth”」、チャーリー・コーセイのソロ・アルバム「GUY’S HEART~Charlies Lupin Songs」。どちらも山下毅雄リスペクトのムーブメントがあった2002年の発売。

 なので、「また…?」と思って聴いてみまたんですが、意表をつかれました。ちょっとした衝撃です。

 「ルパン三世のテーマ その1」(OP)は「オリジナルに沿ったアレンジ?」と思わせて、途中からがらっと雰囲気が変わり、スカ風の曲調に。チャーリーの歌はスキャットになって、そのままエンディングになだれこむ構成。いっぽう「ルパン三世のテーマ その2」(ED)は原曲に忠実なアレンジ。いい雰囲気ですが馬飼野康二の手になる(と思われる)間奏のメロディが省略されているのが惜しい。どちらも悪くないですが、やはり名盤「”Rebirth”」には勝てなかったかな。
 ちなみに、上記の「その1」「その2」の表記はアルバムに準じてますが、本来は「その1」がED曲で「その2」がOP曲です。OPを「ルパン三世主題歌1」、EDを「ルパン三世主題歌2」とする別表記もあるのでややこしいのですが、そこらへん、ちょっと詰めが甘い。

 3曲目は水木一郎が歌った新ルパンのエンディングテーマ「ルパン三世愛のテーマ」のカヴァー。これは新しい発想です。甘くロマンティックな印象のある水木一郎版に比べると、チャーリー・コーセイ版はぐっと「やさぐれ感」が出て、同じ大野雄二が音楽を担当した松田優作の「遊戯シリーズ」みたいな印象。これはありですね。

 4曲目はルパンをテーマに書き下ろされたブルース・ロック風のオリジナル曲「Shadows of Heros」。

 ここまでは、チャーリーの渋い歌声とギターを楽しむソロ・アルバムとして申し分ない。が、カヴァー・アルバムとしては、「こう来るか!」という衝撃力にやや欠ける。

 ところが、次の曲でぶっとびました。

 なんと『あしたのジョー』の「力石のテーマ」をカヴァーしているのですよ。八木正生が作曲し、ヒデ夕樹が歌った名曲です。

 曲目を見たとき、「?」となり、「ヒデ夕樹のソウルフルな歌唱はカヴァーでは超えられないだろう」と思っていたら。
 忘れていたんですね。チャーリー・コーセイもブルース・シンガーだということを。

 「力石のテーマ」、いいではないですか! みごとに自分の歌にしてしまっている。アルバム中白眉の出来です。
 ピアノ(たぶん)が印象的な原曲に対し、新録版はブラスとギターのサウンドが前面に出ている。原曲を生かしつつ、チャーリーならではのソウルを吹き込んだニューヴァージョンとしてちゃんと完成されてます。ヒデ夕樹とはまた違うシャウトもいい。

 ぜひ次はヒデ夕樹の「おいらは淋しいスペースマン」(『キャプテンフューチャー』)と「誓いのバラード」(『スパイダーマン』)のカヴァーを。ダメですかね…。

ルパン三世のテーマ
 OPの口笛ver.が入ってますが、むしろEDこそ口笛ver.を作るべきだったのでは…。

 : ルパン三世のテーマ

あしたのジョー ソングファイル
 歴代『あしたのジョー』ソングをコンピレーションしたソングアルバム。「力石のテーマ」オリジナル版収録。聴き比べてみては?

 : あしたのジョー ソングファイル

2009年1月26日 (月)

1月23日 うちやえゆかワンマンライブ

 1月23日、赤坂グラフィティで開催された、うちやえゆかさんのワンマンライブに足を運びました。
 オリジナルアルバム「Sweets」発売記念ライブです。

 『ふたりはプリキュア Splash Star』主題歌ですっかり子どもたちの人気者になったうちやえさんですが、芸能歴は長く、1986年にファミコンの高橋名人とデュエットした『Bugってハニー』のエンディングテーマ「愛はメリーゴーランド」がデビューでした(はるな友香名義)。1989年には、橘友賀の名で『気まぐれ☆オレンジロード』劇場版の主題歌を歌っています。1995年にはYoukaと名を変えて、オリジナル曲「バラードの肌ざわり」を発表。翌年、『家なき子レミ』エンディングテーマ「しあわせの予感」でふたたびアニメ主題歌の世界に帰ってきました。そして、2004年の『ふたりはプリキュア』で挿入歌「Beautiful World」を歌い、プリキュアシンガーズの仲間入りを果たすのです。

 そんなうちやえさんですが、意外にもソロアルバムは今回が初。ワンマンライブも、なんと15年以上ぶりなのだそうです。

 この夜は、懐かしい80年代の曲からプリキュア・ソング、そして、ニューアルバム収録曲まで、うちやえゆかの世界をたっぷり堪能できるステージになりました。

 スタートはニューアルバムから「スイーツの「ス」」「ハートのジュレ」の2曲。続いて、うちやえさんが、はじめて作詞作曲をした想い出の曲という「切符」。河原の土手で作ったそうです。4曲目は『家なき子レミ』から「しあわせの予感」。大森真理子さんのフルートが入って、『ふたりはプリキュア Splash Star』のために書いた「奇跡の雫」。そして、'95年のオリジナル「バラードの肌ざわり」という選曲。個人的には「バラードの肌ざわり」「しあわせの予感」に感激でした。

 会場には高橋名人の姿もあり、すわ、20年ぶりの『Bugってハニー』デュエットか!?とざわめきが起こりましたが、残念ながらこの夜は実現しませんでした。いつかぜひ!

 2nd setはニューアルバムから、青木久美子さん作詞の「U→Next」、アップテンポなロック調の「Kakushi-aji」、五條真由美さん作詞による「My Sweet Miracle」の3曲を披露。そして、おなじみ「まかせて★スプラッシュ☆スター★」を会場からのコーラスもまじえて熱唱。さすがの盛り上がりでした。続いては雰囲気をがらっと変えて、童謡「ふるさと」をやさしく歌い、ふたたびニューアルバムから「デザート・ブッフェ チュッチュ!」「SWEET HARVEST」で締めくくり。

 アンコールは、うちやえさん作のオリジナル「桜路~夢のひとひら~」、『ふたりはプリキュア Splash Star』から「my growing days」。

 1st setではやや抑え気味だったうちやえさんトークも、2ndでは絶好調で、MC中の会場は楽しい笑いが絶えませんでした。一足早い春を感じさせられる、ほっと心が温かくなるようなライブでした。

Dscf2310 会場で配られたカード。


<set list>

1st set

  1. スイーツの「ス」
  2. ハートのジュレ
  3. 切符
  4. しあわせの予感 (『家なき子レミ』より)
  5. 奇跡の雫 (『ふたりはプリキュア Splash Star』より)
  6. ショコラdeケ・セラ
  7. バラードの肌ざわり(Piano弾き語り)

2nd set

  1. U→NEXT 
  2. Kakushi-aji
  3. My Sweet Miracle
  4. まかせて★スプラッシュ☆スター★ (『ふたりはプリキュア Splash Star』より)
  5. ふるさと(童謡) 
  6. デザート・ブッフェ チュッチュ!
  7. SWEET HARVEST

アンコール

  1. 桜路~夢のひとひら~
  2. my growing days (『ふたりはプリキュア Splash Star』より)

Sweets うちやえゆか
 プリキュアシリーズで出合ったクリエイターやアーチストの協力を得て、ステキな(おいしそうな)アルバムが出来上がりました。ライブ会場やうちやえゆかOfficial Siteで販売中。

 Sweets

2009年1月23日 (金)

NHK大河ドラマ・アーカイブス始まる!

 今年のNHK大河ドラマ『天地人』の音楽は大島ミチルさん。ゴジラ映画の音楽を手掛けた人だけに、スケールの大きい力強い音楽を提供しています。ファンファーレで始まり、ファンファーレで終わるテーマ曲は、どこかフランス騎士物語の香りすら漂うではないですか!? サントラも楽しみです。

 今でこそ、溜め録り方式になった大河ドラマの音楽ですが、近年まで、昔ながらの毎回作曲して録音する方式で音楽がつけられていました。現在でも単発ドラマなら絵に合わせて作曲・録音する作品も多いですが、毎週放送されるドラマでそれをやる番組はほとんど見られない。まして、大河は45分の歴史ドラマです。それなりの重厚さ、格調が求められる。いったい、初期の大河ドラマにはどんな音楽がつけられていたのか?

 そんな疑問に答えてくれる格好の番組がCSの時代劇専門チャンネルで1月よりスタートしました。「大河ドラマ・アーカイブス」です。

 1963年から放映が続くNHK大河ドラマの中から、一部のエピソードしか映像が残っていない作品を週代わりで放送するという画期的なシリーズ。第1回『花の生涯』(1話)、第2回『赤穂浪士』(47話)と放送され、次回は『太閤記』(42話)です。

 『花の生涯』『赤穂浪士』『太閤記』『竜馬が行く』などは「NHK想い出倶楽部II」のタイトルでDVD化済ですが、『三姉妹』『春の坂道』などは未発売、もしくは現在入手できません。また、『源義経』『新・平家物語』『元禄太平記』『花神』『草燃える』などは「総集編」のみDVD化。放送された1話そのままのフォーマットでは観ることができないのです。

 つまり、なかなか視聴の機会に恵まれなかった貴重な映像がまとめて観られる企画なのですよ。しかも、元NHKアナウンサーの松平定知氏による解説つき。第1回では、俳優のTV出演が五社協定によって制限されていた当時の事情と配役の苦労について語られていました。

 注目の音楽のほうは、『花の生涯』『天と地と』『新・平家物語』の冨田勲をはじめ、今年没後20周年を迎える芥川也寸志、武満徹、間宮芳生、佐藤勝ら、映像音楽の世界でも一級の作家が音楽を書いています。

 この機会に、大河ドラマ黎明期の映像と音楽を堪能したいと思います。

 今回放送予定に上っている作品と音楽担当者を以下に掲載しておきます。

放送年タイトル音楽 放映話数
1963 花の生涯 冨田 勲 1
1964 赤穂浪士 芥川也寸志  47
1965 太閤記 入野義朗 42
1966 源義経 武満 徹 1,33,52
1967 三姉妹 佐藤 勝 19
1968 竜馬がゆく 間宮芳生 16
1969 天と地と 冨田 勲 50
1971 春の坂道 三善 晃 52
1972 新・平家物語  冨田勲 46
1975 元禄太平記 湯浅譲二 18
1977 花神 林 光 19
1979 草燃える 湯浅譲二 3,6,10,
16,18,21,
24,25,30,
33,39,43,
48,49

 それにしても、名作『花神』が1話しか残っていないとは…。また、1970年放送の『樅の木は残った』はラインナップに上がっていないところを見ると全滅なのでしょうか(総集編DVDは発売中)。残念というほかありません。

※公式サイト◇大河ドラマ・アーカイブス

NHK想い出倶楽部II ~黎明期の大河ドラマ編~ DVD-BOX
 『花の生涯』『赤穂浪士』『太閤記』『竜馬がゆく』『天と地と』を1話ずつパックしたBOXセット

  : NHK想い出倶楽部II

NHK大河ドラマ テーマ音楽全集 Vol.1 [DVD]
NHK大河ドラマ テーマ音楽全集 Vol.2 [DVD]
 タイトルバックのみを集めたオープニング集。モノラル収録で、オリジナルタイトルが現存していない作品もある。しかし、かろうじて残された映像と音楽を鑑賞できる貴重なパッケージとして価値は高い。

: NHK大河ドラマ テーマ音楽全集 Vol.1 : NHK大河ドラマ テーマ音楽全集 Vol.2

風と雲と虹と 完全版 第壱集 [DVD-BOX]
風と雲と虹と 完全版 第弐集 [DVD-BOX]
 大河ドラマの中で全話が現存するもっとも古い作品。1976年放送。山本直純の音楽も傑作。

: 風と雲と虹と 完全版 第壱集 : 風と雲と虹と 完全版 第弐集

2009年1月16日 (金)

よみがえる細野晴臣の「源氏物語」

 細野晴臣が音楽を手がけた『紫式部 源氏物語』のサウンドトラック盤が紙ジャケット仕様で限定発売されます。

 折りしも、日本テレビ系で出崎統監督による『源氏物語千年紀 Genji』の放映が始まったばかり(音楽はS.E.N.S Project)ですが、今回リリースされる細野音楽版は1987年の公開のアニメ映画。『悟空の大冒険』『タッチ』『銀河鉄道の夜』などの杉井ギサブローが監督した、朝日新聞創刊100周年・テレビ朝日開局30周年・日本ヘラルド映画創立30周年記念作品でした。

 現在の知名度は『銀河鉄道の夜』に比べるとマイナーで、どうやらDVD化もされていないもよう。しかし、今回のサントラ復活には大きな意義があります。

 ひとつは、シンセを駆使した細野サウンドで平安の雅を表現した異色の作品であるということ。邦楽風でもなく洋楽風でもなく、幻想的にも聴こえる細野晴臣ならではの「源氏物語」の世界になっています。ライナーには「琴演奏:細野晴臣」との記載もあります。

 もうひとつは、長らく手軽に聴くことができなかった作品であるということ。おそらく、今回が初CD化ではないでしょうか。しかも、細野晴臣本人の監修によってリマスタリングされた音で聴くことができる。感激もひとしおです。
 ※補記:公開当時、紙箱仕様のCDも発売されていたそうです。(2009.1.19)

 そして、紙ジャケット仕様でオリジナルのジャケットワークが再現されること。金箔を貼った屏風を背景に、アニメの登場人物が扇の中に描かれているという美しいデザインは、LPジャケットならではの見ごたえのあるものでした。

 同じく杉井ギサブロー監督と細野晴臣がコンビを組んだ『銀河鉄道の夜』のサントラ盤も、紙ジャケット仕様ですでに発売中です。賢治作品の独特の死生観を映像に封じ込めた印象深い映画でした。細野晴臣の音楽も、感傷を排した透明感のあるサウンドで、まさに賢治の世界。

 細野晴臣のアニメ音楽といえば、安田成美が歌った『風の谷のナウシカ』のイメージソングを思い浮かべる人も多いと思います。もともと『風の谷のナウシカ』の音楽担当には細野さんの名が上がっていました。今回リマスターされたサントラを聴きながら、細野晴臣が『ナウシカ』の音楽を書いていたら…、という歴史のifに思いをはせてみるのも一興かもしれません。
 2007年にリリースされた「細野晴臣トリビュート・アルバム」では、その「風の谷のナウシカ」を坂本龍一がリアレンジしてレコーディングしたヴァージョンを聴くことができます。

銀河鉄道の夜
 2008年12月17日発売。なぜかAmazonでは紙ジャケ版がヒットしませんが、ちゃんと発売されてます。TOWER.JPにリンクを張ってます。

 : 銀河鉄道の夜

紫式部 源氏物語
 1月28日発売予定。美しいジャケットワークにも注目! キャラクターデザインは林静一と『とんがり帽子のメモル』の名倉靖博が担当しました。

 : 紫式部 源氏物語

 ところで細野サントラといえば、

グーグーだって猫である
 昨年公開された、小泉今日子主演のこの映画のサントラもとても気持ちのよい出来でした。なかでも、細野晴臣と小泉今日子がデュエットする挿入歌「good good」はキョンキョンファン、大島弓子ファン必聴ですよ!

 : グーグーだって猫である

2009年1月 5日 (月)

夢に見たCD化!「アルプスの少女ハイジ」

 2008年のアニメサントラ界最大のトピックは、この1枚ではないでしょうか。

 世界名作劇場の原点というべき作品『アルプスの少女ハイジ』。音楽集リリース(復刻)の希望が多かったにもかかわらず、ながらくCD化されませんでした。
 それがついに実現! 1974年の放映から34年、コロムビアのLP発売(1981)から27年、待った甲斐がありました(涙)。

 コロムビアで「世界名作劇場メモリアル音楽館」の仕事をしながら、「ほんとは『ハイジ』を出さないと、このシリーズは完成しないんだよなぁ」と思っていました。実のところ、私も一時『ハイジ』のサントラを企画し、音源も取り寄せて、発売の準備をしていたことがありました。それが、諸般の事情でかなわず涙を呑んだ記憶があるだけに、今回のリリースは感慨もひとしおです。

 発売はコロムビアではなく、Rambling Records。サントラファンには懐かしいSLC(Soundtrack Listeners Communication)の流れを汲むレーベルです。
 通常版と限定版の2タイプがあり、通常版はCD1枚、限定版は2枚組、と大きく仕様が異なります。
 通常版は、コロムビアからリリースされた「TVオリジナルBGMコレクション アルプスの少女ハイジ」の復刻に、フルサイズ主題歌・挿入歌を加えた内容。限定版は未収録BGMを加えて構成を一新した、熱心なファン向け仕様です。以下、限定版を想定して紹介します。

 構成と解説は早川優さん。限定版にはオールカラーブックレットがつき、詳細な作品解説と音楽解説が付されています。

 DISC1の聴きどころは、マンドリンが奏でる岳夫節にしびれる「アルムの山へ」の「荷馬車にゆられて」、アルプスの大自然が目にうかぶ「山のけしき」の一連の曲、今回はじめて商品化された「白銀のアルム」、心がほっと温まる「またあした」など。ことに「白銀のアルム」に収められた「雪がふる」は劇中でも雪降るシーンに流れていた曲で、静かにじんわりと胸に染みてくる名曲です。
 挿入歌「夕方の歌」「アルムの子守唄」のTV用1コーラスヴァージョンもうれしい初商品化。
 DISC2では、弦のアンサンブルが優雅な「フランクフルトへ」、ハイジの想いをリリカルな旋律が表現する「想いは遠く」、ハイジとクララのゆれる心を描く「ふたつのこころ」など。なかでも「想いは遠く」の3曲目に収められた「おんじの夢」はハイジBGMの精華ともいうべき名曲でしょう。
 主題歌のスペイン語ヴァージョンはオケ、ヴォーカルを新録して再現した珍品。スペイン語になってもまったく違和感がないのは、「キャンディキャンディ」フランス語ヴァージョン同様、さすが渡辺岳夫メロディです。

 残念なのは、BGMのマスターテープが一部散逸して、第1話をはじめ初期の話数で使われた曲の大半が行方不明なこと。それは、私が準備していた段階でもすでに同じ状況でした。1話冒頭でアルプスの山々の素晴らしい美術を背景に流れるホルンの雄大な曲や、ハイジが荷馬車に乗ってアルムの山へ向う場面の曲も未発見になっています。
 幸いなことに、行方不明曲の一部はコロムビアからリリースされた「TVオリジナルBGMコレクション」に収録されていたので、そこから復刻されています。

 ただ、「TVオリジナルBGMコレクション」の構成にはちょっと問題がありました。番組後半以降に録音されたBGMが初期エピソードのブロックに収録されているので、音楽とエピソードをまるごと記憶している人には違和感があるのです(解説にも誤りがあります)。たとえば「アルムの山へ」に含まれる「おだやかな日」、「山と友達」の「ユキちゃん」、「陽ざしの中へ」に含まれる全曲などが、番組後半、ハイジがフランクフルトからアルプスに帰ってきて以降のエピソードから使われた曲です。ハイジの音楽マスターには混乱があり、解説で「第2回録音」と記された曲の大半は、おそらくは第4回以降の録音曲であると考えられます。
 このあたりの事情は、私が『ハイジ』完全版を作ろうとしていたときにかなり慎重に調べました。そのときは「TVオリジナルBGMコレクション」を完全に解体して構成しなおすことを考えていたのですが…、やはり初期録音曲が散逸していることがネックで、悩んだものです。今回の早川さんの構成は、旧盤の構成の間にメロオケや初商品化曲をはさみこむことで、うまく違和感を最小限に抑えるよう考えられています。楽曲解説でも、あえて「どの場面で使われた」という紹介を廃したのは、渡辺岳夫の音楽を純粋に楽しんでもらうための配慮でしょう。

 ブックレットには、渡辺岳夫が『ハイジ』の音楽の想い出をつづった貴重なテキストが復刻掲載されています。
 渡辺岳夫は、この作品のために自費で2度にわたりスイスまで取材に出かけました。CDには収録されていませんが、現地で録音したヨーデルやカウベルなどの民俗楽器による曲もテープには残っています(本編では一部が使用されています)。
 「『ハイジ』が作曲家・渡辺岳夫の音楽が変わる転機になった」というのは私がよく言う話です。当時の渡辺岳夫は『巨人の星』や『アタックNo.1』『魔法のマコちゃん』といったアニメ作品、また時代劇などで活躍していました。独特の「岳夫節」はそのころからのものですが、サウンド的には、心情描写に重きを置いたどっしりした音が多い。しかし、『ハイジ』以降、渡辺岳夫の音楽はよりシンプルに洗練され、ヨーロッパ風の香りが混じってくる。その特徴は『ハイジ』のあとに手がけた『魔女っ子メグちゃん』に顕著です。

 情感をリードするドラマチックな音楽から、キャラクターのそばにそっと寄り添うような自然な音楽へ。その作風の変化が『ハイジ』の音楽から聴こえてきます。

 渡辺岳夫の真の代表作と呼べる『アルプスの少女ハイジ』の音楽を集大成した待望のリリース。ぜひこの機会を逃さずに入手して聴いてください。劇中で使用された曲はほぼ網羅されているので、熱心なファンも名場面を思い出して懐かしく聴けるはず。そんなに熱心な『ハイジ』ファンでないという方も、渡辺岳夫のすばらしい音楽の世界に触れてみてほしいと思います。

 欲をいえば「カルピスまんが劇場」のタイトルに流れる短い曲も収録してほしかったところですが、またの機会を待ちましょう。
 『ハイジ』には、ほかにも冬木透先生が編曲した「管弦楽と室内楽による組曲 アルプスの少女ハイジ」、同じく冬木編曲による「女声合唱によるアニメファンタジー アルプスの少女ハイジ」という作品もあります。いつの日か、未発見音源も含めた『ハイジ』の音楽の全貌が商品化されることを心から祈っています。

アルプスの少女ハイジ オリジナル・サウンドトラック [限定版]
 DVDトールケースのデジパック仕様。2枚組。

 : アルプスの少女ハイジ オリジナル・サウンドトラック [2枚組限定版]

アルプスの少女ハイジ オリジナル・サウンドトラック [通常版]
 こちらは普通のCDと同じジュエルケース仕様。

 : アルプスの少女ハイジ オリジナル・サウンドトラック [通常版]

2009年1月 3日 (土)

あけましておめでとうございます

本年もよろしくお願いいたします。

2009nenga

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