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2009年8月

2009年8月27日 (木)

忘れられた名作「シリウスの伝説」

 すぎやまこういちのアニメ音楽といえば、『伝説巨神イデオン』『サイボーグ009』『劇場版 科学忍者隊ガッチャマン』の3本を上げる人がほとんどでしょう。まれに『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』という人もいるかもしれません。

 しかし、私にはもう1本、忘れられないすぎやまこういちのアニメ作品があります。

 『シリウスの伝説』。1981年に公開されたサンリオ製作のアニメーション映画です。

 この映画は公開当時、劇場で観ました。
 ロミオとジュリエットの悲恋をファンタジーの世界に置き換えた物語で、映画としては、当時の私にはちょっと退屈でした。けれど、映像と音楽の美しさは深く印象に残っています。特に、すぎやまこういちの音楽がすばらしかった。

 『劇場版 科学忍者隊ガッチャマン』に続き、すぎやまこういちの音楽をNHK交響楽団が演奏しています。主題曲「時よゆるやかに」は、上品で美しいメロディに、シンフォニックなアレンジが感動を呼ぶ名曲。サーカスの歌も絶品でした。当時、ワーナーパイオニアから発売されていたサウンドトラック・アルバムは愛聴盤の1枚でした。

 その後、『シリウスの伝説』は、ほとんど忘れられた存在となり、名曲「時よゆるやかに」も知る人が少なくなっているのが残念です。

 現在、この曲を聴くことはできないのでしょうか?

 実は、歌入りとインスト、2種類をCDで聴くことができます。

 歌入りは、サーカスのベストアルバム「GOLDEN☆BEST/サーカス」に収録。このアルバムは、サーカスの代表曲「Mr.サマータイム」「アメリカン・フィーリング」をはじめ、ミシェル・ルグランが音楽を担当した映画『火の鳥』主題歌のサーカス・ヴァージョンや、石立鉄男主演のTVドラマ『鉄道公安官』主題歌「ホームタウン急行」、TVアニメ『まんが日本史』主題歌「風のメルヘン」なども収録されているお買い得盤です。

 また、東京都交響楽団がすぎやまこういち作品を本人のアレンジで録音したアルバム「君だけに愛を」にも、「時よゆるやかに」が取り上げられています。こちらは、オリジナルのアレンジを生かしたインストゥルメンタル・ヴァージョン。映画のサントラと同じイメージで楽しむことができます。このアルバムには、『伝説巨神イデオン』の副主題歌「コスモスに君と」も収録されているので、『イデオン』ファンにも見逃せない1枚でしょう。

 できれば、『シリウスの伝説』オリジナル・サウンドトラックの復刻も実現してほしいところ。すぎやまこういちが生み出した音楽のすばらしさ、この時期のアニメ音楽の質の高さを実感できる名作なのですから。

GOLDEN☆BEST/サーカス 歌の贈り物
 サーカスのデビュー25周年を記念して、過去8レーベルに残した音源を網羅した集大成ベスト盤。2曲の新録音曲も収録。

 : GOLDEN☆BEST/サーカス 歌の贈り物

君だけに愛を 東京都交響楽団×すぎやまこういちヒット曲集
 タイガースの名曲からアニメ主題歌まで、すぎやまこういち作品を本人の編曲で甦らせた管弦楽曲集。「コスモスに君と」は『伝説巨神イデオン』オリジナルBGMをグレードアップした雰囲気の仕上がり。

 : 君だけに愛を 東京都交響楽団×すぎやまこういちヒット曲集

シリウスの伝説 [DVD]
 映画本編もDVD化されました。美しい音楽と映像を確認したいという方は、ぜひ本編も。

 : シリウスの伝説

2009年8月26日 (水)

ついに発売!「伝説巨神イデオン 総音楽集」

 『伝説巨神イデオン 総音楽集』が8月26日に発売されました。

 キングレコード伝統の「総音楽集」最新アルバムですよ。『無敵超人ザンボット3/無敵鋼人ダイターン3』『機動戦士ガンダム 劇場版』『機動戦士ガンダム TVシリーズ』『勇者エクスカイザー』『装甲騎兵ボトムズ』と続いて、しばらく間が空いてしまいましたが、待望の『イデオン』がようやく実現しました。大好きな音楽だけにほんとうにうれしい。構成は早川 優さんが担当しています。

 4枚のCDに、TVシリーズの音楽集2枚と、「ドラマ編」LPに収録されていたBGM、劇場版サントラ2枚、そして、LP「未収録BGMコレクション」の収録曲をすべて網羅。さらには、「交響曲イデオン」までも収録した「総音楽集」の名にふさわしいアルバムになっています。

 『伝説巨神イデオン』の音楽はすぎやまこういち。1枚目の音楽集は、独立したアルバムとしても聴き応えのある構成で、あの曲順でまるごと覚えているというファンも多いでしょう。80年代にCD化された際は、曲順・選曲を変えた再構成版(「PTOLEMAIC SYSTEM」)が発売されていましたが、今回は、オリジナルの曲順を生かした構成になっているのがうれしい。

 ただ、本来なら、TVシリーズで2枚、劇場版で2枚、プラス「交響曲」1枚で5枚組にしたいところ。4枚のCDに収めるためにややムリをした構成になっています。「交響曲」は別に1枚もので出してもよかったのではないかなぁ。
 とはいえ、長らく入手不可能になっていた「音楽集2」や劇場版の音源、そして初CD化となる「ドラマ編」、「未収録BGMコレクション」収録曲が一挙に届けられたのですから、素直によろこびましょう。

 聴きどころは、TV版では羽田健太郎のピアノ、直居隆雄のギターなどが壮絶なセッションを繰り広げる「デス・ファイト」、劇場版では、『発動編』終盤の宗教音楽を思わせる壮麗な曲「カンタータ・オルビス」など。TV版はメロディを生かしたオーケストラ曲と、リズム・セクションが活躍するフュージョン風の楽曲、それぞれが印象的。劇場版はオーケストレーションの美しさがより前面に出た作品になっています。

 また、「交響曲イデオン」は、本格的な4楽章の交響曲として書かれた作品で、数あるアニメの交響組曲、交響詩作品などの中でも、最高傑作と呼べる作品のひとつです。小松和彦指揮による東京フィルハーモニー交響楽団の演奏。すぎやまこういちは70年代後半から、「オーディオ交響曲」と名づけたオーケストラ作品を発表しており、この「交響曲イデオン」は「交響曲第3番」と位置づけられています。『イデオン』のモチーフを使いながらも、独立した音楽作品として書かれているのですね。この曲もいつかコンサートホールで聴いてみたいものです。

 折しも、CSのファミリー劇場では『伝説巨神イデオン』を放送中。この放映であらためて『イデオン』の魅力にとりつかれたという人のためにも、今回の「総音楽集」はタイムリーな企画です。かつてファンだった方も、新しくファンになったという方も、すぎやまこういち音楽のすばらしさ、戸田恵子歌う「コスモスに君と」の美しさを、ぜひこのアルバムで確かめてください。
(「TVで使われているあの曲が入ってない…」という方もおられるでしょうが、それは大人の事情ということで…)

伝説巨神イデオン 総音楽集
 ジャケットは北爪宏幸の描き下ろし

 : 伝説巨神イデオン 総音楽集

イデの伝説 PRISMIX PLAYS IDEON
 こんなのもあります。大塚彩子率いるユニットPRISMIXが『イデオン』の音楽をリアレンジして演奏したオリジナル・アルバム。

 : イデの伝説 PRISMIX PLAYS IDEON

2009年8月25日 (火)

ブラジル風バッハ全曲演奏会

 8月22日、東京オペラシティコンサートホールで開催された「ブラジル風バッハ全曲演奏会」に足を運びました。

 すごいコンサートでした。ブラジルの作曲家・ヴィラ=ロボスの没後50年を記念して、彼の代表作である「ブラジル風バッハ」第1番から第9番までを1日で演奏しようという企画。「おそらく、世界初」の試みなのだそうです(指揮者ミンチュクの言葉)。歴史に残る内容といってよい。

 ヴィラ=ロボスは私がもっとも好きな作曲家のひとり。クラシックの作曲家ではラヴェルと、このヴィラ=ロボスがダントツで好きなのです。
 1887年にリオ・デ・ジャネイロに生まれたヴィラ=ロボスは、自身の生まれ育ったブラジルの土地に根ざした音楽を書き続けました。現代音楽の実験的な要素を持ちつつも、ブラジル独自の民謡の旋律やリズムをとりいれて、実に壮麗で躍動感に満ちた音楽を作り上げたのです。彼の音楽からは、南米の大地や空や森の情景・匂いが感じられるし、どことなく懐かしい親しみやすさがある。ブラジル国民からは「ブラジルの魂を表現した」と尊敬され慕われる国民的作曲家です。同時に、純音楽の分野で比類ないユニークな音楽を作り上げた独創的な作曲家でもありました。芸術家と大衆音楽家の両方の側面を持つ作曲家、イタリア人にとってのニーノ・ロータ、日本でいうなら伊福部昭と宮川泰を足して2で割ったような存在です。

 今回のコンサートで取り上げられた「ブラジル風バッハ」とは、原題を「Bachianas Brasileiras」といい、「ブラジルのバッハ風音楽」または「ブラジル風でまたバッハ風の音楽」を意味しています。ヴィラ=ロボスは1930年から1945年にかけて、9作の「ブラジル風バッハ」を発表しました。1つ1つが個性的で、たとえば楽器編成ひとつとっても、第1番は8本のチェロのみ、第2・3・7・8番はオーケストラ、第4番はピアノソロ、第6番はフルートとファゴットだけ、第9番は混声合唱、という具合にバラエティに富んでいます。そして、それぞれが10分から30分近い長さを持つ組曲なのです。
 全演奏時間はおよそ3時間。コンサートは、演奏者へのインタビューや休憩時間をはさんで、14時から19時まで、実に5時間におよぶ長さになりました。

 演奏は舞台音楽や映像音楽の演奏も多い東京フィルハーモニー交響楽団。指揮はブラジル・サンパウロ出身の俊英・ロベルト・ミンチュク。意外にもこれが初来日とのことです。

 プログラムは、編成の少ない作品から、厚い作品へと次第にスケールを増していく構成。
 バッハ風の瞑想的な旋律を持つ第6番からスタートしました。オーケストラ曲では目立つことの少ないファゴットがフルートとともに主役を張る作品です。
 2曲目は無伴奏合唱による第9番。CDなどでは合唱の代わりにオーケストラ演奏で収録されることが多く、オリジナルの合唱版が生で聴けるのは貴重です。
 3曲目にピアノ独奏による第4番。酩酊を誘うようなリズム、フレーズの繰り返しが印象的でした。
 そして、4曲目に8本のチェロが演奏する第1番。私は「ブラジル風バッハ」の中では、この第1番と次に演奏された第5番が大好きなのです。チェロだけのオーケストラが奏でる、スリリングでいて抒情的な曲想。ヴィラ=ロボスの曲では弦の低音域の使い方が印象的で、このチェロ8本だけの編成の曲にも、その特徴があらわれています。
 5曲目はソプラノと8本のチェロの共演による第5番。ヴィラ=ロボスのすべての曲の中でも、もっとも人気のある曲でしょう。ソプラノが歌うメロディの美しさに、ヴィラ=ロボスの名を頭に刻んだという人も多いはず。私も、学生時代、ラジオから聴こえてきたこの曲でヴィラ=ロボスを知りました。ソプラノ独唱は世界で活躍するオペラ歌手・中嶋彰子。「ブラジル風バッハ」を歌うのははじめてとのことでしたが、実に感動的な、すばらしい歌唱でした。情熱的でいて、ミューズのような神秘性がある。アリアの微妙な表現を的確に歌いあげて、コンサート中の白眉といえる演奏になりました。ドレスも個性的で、ブラジルの太陽をイメージした鮮やかなオレンジ色に子どもたちが描いたカラフルな絵をパッチワークしたロングドレス。今回のコンサートのために特別に手作りしたオリジナルの衣装なのだそうです。

 30分の休憩をはさんで、後半はオーケストラ曲です。
 ピアノとオーケストラによる第3番、ラテンパーカッションをフィーチャーした野性的なリズムを持つ第8番、「カイピラの小さな汽車」という副題を持つ第4楽章が有名な第2番、と続きます。
 実は、「ブラジル風バッハ」の中でも、オーケストラの曲はそんなに好んで聴いていなかったのです。小編成曲のユニークさに惹かれていた。今回あらためて全曲を生で聴く機会を得て、若いときには気づかなかったオーケストラ曲の魅力に気づかされて、大いに感銘を受けました。
 ヴィラ=ロボスのオーケストラ曲は、「劇場的」とでも形容したくなるふしぎな個性を持っています。「劇的=ドラマティック」でも「映像的」でもない。「劇場的」というのは、楽器ひとつひとつが役者のようにそれぞれ見せ場を持っていて、その役者たちがステージの上に鮮やかな一つの世界を作り出す、とそんなイメージです。

 そして、オーケストラ曲はパワフル。それぞれが4つの楽章を持ち、演奏時間も20分から30分くらいありますから、ちょっとした「交響曲」なみのヴォリュームを持っています。しかも、交響曲ならば、激しい楽章のあとにはゆったりした楽章があったり、軽快な楽章があったりして、4つの楽章のバランスが考えられているものですが、ヴィラ=ロボスの曲は、1楽章から4楽章まで、どれもテンションが高く、みんなオーケストラの全合奏で盛り上がって終わるような曲が並びます(第2番はちょっと違う)。テレビ番組でいうなら、最終回の盛り上がりが4回続くようなものです。情熱的で、踊りだすと止まらない感じ。このあたりがブラジル気質なんだろうなぁと思います。指揮のミンチュクも、リズムを強調する部分ではほとんど踊るようにして指揮していました。

 ラストの曲はオーケストラが美しく色彩感あふれる音楽を奏でる第7番。「ブラジル風バッハ」の中でも演奏時間が一番長く、楽器編成も最大規模の大曲です。長丁場のコンサートにもかかわらずオーケストラのテンションは落ちず、ミンチュクも渾身の指揮でオケをリードし続けました。第4楽章のフーガの盛り上がりには客席も一緒に高揚してくるのがわかる。
 伊福部昭を思わせる反復=オスティナート、民族的リズムもヴィラ=ロボス作品の特色のひとつです。伊福部作品では日本らしいエスニックな曲調になるのですが、ヴィラ=ロボスの曲では、ブラジルという土地を反映して、かつて南米に移民してきたヨーロッパの人々の音楽、特にスペインやポルトガルのリズムや旋律が盛り込まれています。さらに、アフリカの音楽の血が注ぎ込まれて、それが独特の「ブラジル風音楽」を作り上げている。この第7番にも、その「血脈」を濃厚に感じ取ることができます。

 鳴り続ける拍手に、指揮者のミンチュクが何度もステージに登場しましたが、アンコールはなし。全9曲の演奏を終え、指揮者もオーケストラも疲労こんばいだったのでしょう。でも、じゅうぶん満足でした。心地よい満腹感でいっぱい。幸せな1日でした。

 ふだんクラシックなんか聴かないという方も、機会があれば、ぜひヴィラ=ロボスを聴いてみてください。映画音楽にも通じる豊かなイメージとドラマ性、躍動感、美しい旋律、繊細さと壮大さ、音楽のあらゆる魅力が詰まっています。


<set list>

  1. ブラジル風バッハ第6番(1938)~フルートとファゴットのための
     I アリア/ショーロ
     II ファンタジア
  2. ブラジル風バッハ第9番(1945)~無伴奏合唱のための
     I プレリュードとフーガ
  3. ブラジル風バッハ第4番(1930[~41])~ピアノのための
     I プレリュード/序奏
     II コラール/セルタン(ブラジル奥地)の歌
     III アリア/カンティガ(歌、古謡)
     IV 舞曲/ミウチーニョ

    休憩

  4. ブラジル風バッハ第1番(1930)~8本のチェロのための
     I 序奏/エンボラーダ
     II プレリュード/モヂーニャ
     III フーガ/コンヴェルサ(会話)
  5. ブラジル風バッハ第5番(1938/45)~ソプラノ独唱と8本のチェロのための
     I アリア/カンティレーナ
     II 踊り/マルテロ(槌のひびき)

    休憩

  6. ブラジル風バッハ第3番(1938)~ピアノとオーケストラのための
     I プレリュード/ポンテイオ
     II ファンタジア/デヴォネイオ
     III アリア/モヂーニャ
     IV トッカータ/ピカパオ
  7. ブラジル風バッハ第8番(1944)~オーケストラのための
     I プレリュード
     II アリア/モヂーニャ
     III トッカータ/カチーラ・バチーダ
     IV フーガ

    休憩

  8. ブラジル風バッハ第2番(1930)~オーケストラのための
     I プレリュード/カパドシオの歌
     II アリア/われらが大地の歌
     III 舞曲/舞曲の思い出
     IV トッカータ/カイピラの小さな汽車
  9. ブラジル風バッハ第7番(1942)~オーケストラのための
     I プレリュード/ポンテイオ
     II ジーグ/クァドリーリャ・カイピラ
     III トッカータ/ヂザフィオ
     IV フーガ/コンヴェルサ

 ロベルト・ミンチュク指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
 ソプラノ:中嶋彰子
 フルート:斉藤和志
 ファゴット:黒木綾子
 ピアノ:白石光隆
 合唱:新国立劇場合唱団
 司会:加藤昌則


Bachianas Brasileiras Nos. 2,3,4
Bachianas Brasileiras Nos. 1,4,5,6
Bachianas Brasileiras Nos. 7,8,9
 今回のコンサートと同じロベルト・ミンチュクの指揮による「ブラジル風バッハ」全曲録音アルバム。 演奏はサンパウロ交響楽団。

 : Bachianas Brasileiras Nos. 2,3,4

 : Bachianas Brasileiras Nos. 1,4,5,6

 : Bachianas Brasileiras Nos. 7,8,9

2009年8月19日 (水)

ピクサー 強さの秘密 「メイキング・オブ・ピクサー」

 ピクサーの創立から快進撃にいたるまでを綴った本『メイキング・オブ・ピクサー』(早川書房)を読みました。

 ピクサー・アニメーション・スタジオの創立から、CGアニメづくりの苦闘、映画『トイ・ストーリー』のヒット、その後の快進撃まで、豊富な証言とエピソードでつづったドキュメントです。

 ピクサーの歴史は、CGアニメを作るための専用のハードとソフトを作るところからスタートしました。アップルやHPのように、ガレージのコンピュータ作りから始まったというところが、最初から「CGアニメ」を志向したピクサーならでは、です。当時はCGの黎明期で、コンピュータ・グラフィックスだけで1本の映画を作るなど夢のまた夢と思われていました。ピクサーは、「CGアニメ映画」実現のために、技術的な課題を一つずつクリアするところから始めたわけです。CGアニメ創世記のフィルム作りは技術開発と一体だったんですね。その技術が映画『スターウォーズ』や『スタートレック』などのCG映像に生かされたというのは、特撮ファンにも注目の裏話です。

 また、スティーブ・ジョブスがなぜピクサーを買ったのか不思議だったんですが、「映像処理に特化したコンピューター(ハード)とソフトのメーカーだと思っていた」というのが笑えます(でも、結果的にジョブスがピクサーを守ることになった)。

 ピクサーのすごいところは、技術だけで満足しなかったところ。あくまで目標は「アニメ映画づくり」にありました。物語づくり、キャラクター描写の弱さを補うためにさまざまな才能が集まってくる。その1人が、ラセターでした。このあたり、60年代の円谷プロみたいで読んでいてワクワクするところです。ディズニーに認められなかったラセターが、技術的にも工業的にもディズニーを超える作品を作り上げるドラマティックな展開は感動的です。

 ピクサーのロゴにもなっているスタンドランプのキャラクター(名前はルクソー・ジュニア)誕生秘話も楽しい。

 読み終えて、技術開発とエンターテイメントの追求、2つの志向が融合しているのがピクサーの強さなのだなぁと思いました。「コンピュータが作る」と思われているCGも、実はアニメーター次第で命が吹き込まれる(“アニメーション”の語源そのままに)。まだまだCGアニメの可能性はあるようです。

 ピクサーというユニークなスタジオが生まれた背景、ピクサーが映画界にもたらしたもの、そして、ピクサー作品の面白さの秘密など、興味が尽きない内容の1冊。ピクサーファンならずとも、映画ファン、アニメファンならぜひ読んでおいてほしい本です。ピクサーの技術と歴史が詰まったDVD『ピクサー・ショート・フィルム』も、ぜひあわせてご覧ください。

メイキング・オブ・ピクサー~創造力をつくった人々
 

 : メイキング・オブ・ピクサー

ピクサー・ショート・フィルム&ピクサー・ストーリー 完全保存版 [DVD]
 劇場で長編作品の前に必ず上映されているピクサーの短編アニメを集めたDVD。ピクサーの草創期から現在に至るまでの歩みを関係者の証言で綴るドキュメンタリー「ピクサー・ストーリー~スタジオの軌跡」を同梱。

 : ピクサー・ショート・フィルム&ピクサー・ストーリー

ディズニー・ピクサー・グレイテスト
 『トイ・ストーリー』から『ウォーリー』まで、ピクサー作品の主題歌・サウンドトラックを集めた音楽集。1作ずつサントラ盤をそろえるのは大変だが、この1枚で名曲がまとめて聴ける。ピクサーファン必携のアルバムだ。なお、日本盤は米オリジナル盤から2曲が削られ、代わりに『トイ・ストーリー』と『モンスターズ・インク』の日本版主題歌が収録されている。

 : ディズニー・ピクサー・グレイテスト

2009年8月16日 (日)

夏コミ出店終了しました

 夏のコミックマーケット出店終了しました。

 ご来店いただいたみなさん、ありがとうございます。

 冬コミは未定ですが、またご縁があればお会いしましょう。

★お詫び

 新刊「劇伴倶楽部 2009.08増刊 プリキュア・サウンドトラック大全」に誤記がありました。

 P47 『プリキュアオールスターズDX』の録音日

   「2008年2月18日」(誤) ⇒ 「2009年2月18日」(正)

 でした。お詫びして訂正します。

----------------------------

 8月14日(金) 10:00~16:00
 会場:東京ビッグサイト
 場所:東地区 “O”ブロック-43b (東 O-43b)
 サークル名:劇伴倶楽部

 新刊できました。

 『劇伴倶楽部 Vol.5 渡辺宙明 Around 1990 Works』
 『劇伴倶楽部 2009.08増刊 プリキュア・サウンドトラック大全』

 詳細はこちら

 バックナンバーは下記2タイトル在庫あります。

 『劇伴倶楽部 Vol.3 池 頼広の世界』
 『劇伴倶楽部 Vol.4 渡辺宙明 1977-78 Works』

2009年8月12日 (水)

シュトラウス一家の音楽会

 8月8日、東京芸術劇場で開催されたコンサート「シュトラウス一家の音楽会」に足を運びました。

 足を運んだ理由はいろいろあって、ひとつは、もともと学生時代にヨハン・シュトラウスIIの曲をよく聴いていたこと。「美しく青きドナウ」は映画でもおなじみですし、「こうもり」もお気に入りの曲でした。そして、三沢 郷が生涯でもっとも大きな影響を受けた作曲家がヨハン・シュトラウスIIだったこと。そのシュトラウスの作品がまとめて演奏される格好の機会です。3番目に、夏の午後に行くにはちょうどいい清清しいコンサートになりそうだなぁと思ったこと。それから、たまにはホンモノのオーケストラを聴いてみないと、という勉強心。などなど。

 このコンサート、ウィーンフィルの「ニューイヤー・コンサート」を夏にやろうという企画だったのだそうですね。客席はほぼ満席。若い人から年配の人まで幅広い客層です。演奏は秋山和慶指揮の東京交響楽団。ソプラノがウィーンでも活躍するオペラ界のミューズ・幸田浩子。

 いやあ、いいコンサートでした。
 クラシック・コンサートっぽい堅苦しさがない、肩のこらない、爽快感のある演奏会でした。「シュトラウス一家の音楽会」というタイトルですが、大半がヨハン・シュトラウスIIの曲というのもうれしい(名曲の数が段違いですからね)。曲順もよく考えられている。しかも演奏は一流。秋山和慶の指揮のカッコよさにしびれました。ちなみに秋山さんはNHK大河ドラマのテーマ曲の指揮などもやっているので、映像音楽とも無縁ではありません。

 クラシックのコンサートには珍しい、遊び心の効いた演出がありました。雷雨を表現したポルカ「雷鳴と電光」では、ステージ上の楽団員が傘を広げて回したり、コンサートマスターが席を立って雨を避ける格好で上手まで駆け抜けたり。「シャンペン・ポルカ」では、演奏中に1階客席後方からほんとうにシャンペンを手にした楽団員が、観客にシャンペンの小瓶をプレゼントしながらステージ上まで歩いて、指揮者と乾杯。アンコールの「トリッチ・トラッチ・ポルカ」では、チェロのメンバがチェロをくるりと廻すパフォーマンスが見られました。弦楽器を回すのは「のだめカンタービレ」の世界だけじゃなかった! ちなみに「トリッチ・トラッチ」とは「おしゃべり」「井戸端会議」みたいな意味です。

 ソプラノの幸田浩子さんもよかった。写真で見るよりずっとキュート。表情豊かで華があり、世界を魅了するソプラノにうっとり(あとでサインもらっちゃいました)。

 1曲目の「『こうもり』序曲」の中盤、叙情的な旋律が奏でられるところで、ビビっときました。『デビルマン』や『流星人間ゾーン』の間奏のあの音なのです。弦と木管と金管のアンサンブル、ティンパニの使い方など、「たしかに、三沢郷の音にはヨハン・シュトラウスIIの響きがある」と納得しました。

 コンサートのハイライトは第2部の最後から2曲目、「美しき青きドナウ」です。指揮の秋山さんも、この曲は大切に振っているのがわかる。『2001年宇宙の旅』で流れるこの名曲を、コンサートでフルで聴くのははじめてでした。最後の曲はアンコールでよく演奏される「ラデツキー行進曲」。もちろん客席の手拍子つきです。この曲のあとにさらにアンコールがあるのですから、サービス満点というか、愉しみの尽きないコンサートでしたね。


<set list>

第1部

  1. オペレッタ「こうもり」序曲 (ヨハン・シュトラウスII)
  2. オペレッタ「こうもり」より
      “侯爵様、あなたのようなお方は”* (ヨハン・シュトラウスII)
  3. チックタックポルカ (ヨハン・シュトラウスII)
  4. ポルカ「雷鳴と電光」 (ヨハン・シュトラウスII)
  5. オペレッタ「こうもり」より
      “田舎娘の姿で”* (ヨハン・シュトラウスII)
  6. アンネン・ポルカ (ヨハン・シュトラウスII)
  7. 皇帝円舞曲 (ヨハン・シュトラウスII)

第2部

  1. オペレッタ「ジプシー男爵」行進曲 (ヨハン・シュトラウスII)
  2. オペレッタ「ウィーン気質」より
      “ウィーン気質”* (ヨハン・シュトラウスII)
  3. シャンペン・ポルカ (ヨハン・シュトラウスII)
  4. 鍛冶屋のポルカ (ヨゼフ・シュトラウス)
  5. ワルツ「春の声」*  (ヨハン・シュトラウスII)
  6. ポルカ「テープは切られた」 (エドアルト・シュトラウス)
  7. ワルツ「美しく青きドナウ」 (ヨハン・シュトラウスII)
  8. ラデツキー行進曲 (ヨハン・シュトラウスI)

アンコール

  • ポルカ「とんぼ」 (ヨゼフ・シュトラウス)
  • トリッチ・トラッチ・ポルカ (ヨハン・シュトラウスII)

 秋山和慶指揮 東京交響楽団
 ソプラノ:幸田浩子 (*)


カリヨン~幸田浩子 愛と祈りを歌う [CD+DVD]
 2nd ソロ・アルバム。「アヴェ・マリア」各種にオペラのアリア、「アメイジング・グレース」、ヴィラ=ロボスなどを交えた選曲。演奏は新イタリア合奏団。彼女の声でモリコーネが聴きたいなあ。

 : カリヨン

「子どものための交響詩 ジャングル大帝」新録音プロジェクト

 1966年に発売された冨田 勲作曲・編曲によるアルバム『子どものための交響詩 ジャングル大帝』(監修:手塚治虫/構成:山本映一・田代敦巳・藤本祐三)を、アレンジに改訂を加えて新録音する計画が進んでいます。

⇒ 子どものための交響詩 ジャングル大帝 プロジェクト

 尚美学園大学 尚美総合芸術センターが進めているプロジェクトで、上記の特設ページによれば、

「子どものための交響詩ジャングル大帝」が持つアルバムコンセプトを活かし、2009年版として新たな編曲に加え、新録音、教材としての充実も図り、5.1chサラウンドによる新しい表現を織り込んだ「新作」として尚美総合芸術センターが原盤(レコード)を制作する

ということだそうです。

 7月のSF大会のイベントでも語ったのですが、『子どものための交響詩 ジャングル大帝』は2回CD化されているものの、すぐに廃盤になり、現在は容易に聴くことができません。
 今回のプロジェクトは、もちろん、冨田 勲先生本人の新編曲によるもの。演奏も、1966年のアルバムを録音した日本フィルハーモニー交響楽団が担当するそうですので、21世紀の録音技術による新たな『交響詩 ジャングル大帝』が生まれるのでは、と期待が高まります。
 なにより、この名作がまたCDで聴けるようになるのがうれしい。

 発売は10月下旬を予定しているとのこと。
 詳細わかれば、またお知らせします。

 
 1985年にCD化された際のジャケット。LPとはイラストが異なります。

2009年8月11日 (火)

8月26日開催!<JCAAアレンジャーズ・サミット2009>

 JCAAとは、日本作編曲家協会(Japan Composers & Arrangers Association)の略称。日本のほとんどの職業作曲家・編曲家が加盟している団体です。

 このJCAAの主催で毎年コンサートが開催されています。その名も、<JCAAアレンジャーズ・サミット>。協会メンバーが担当した映画音楽やドラマ・アニメの音楽が演奏されることが多く、映像音楽ファンには、ひそかに注目されているコンサートです。

 今年のコンサート<JCAAアレンジャーズ・サミット2009>が、来週8月26日にめぐろパーシモンホールで開催されます。


 「シネマ・トラック TRICK TRIP TRAP

 2009年8月26日(水) 開場 18:00/開演 18:30
 めぐろパーシモンホール 大ホール

 出演:寺嶋民哉、山下康介、南林弥宏
 ゲスト:手嶌 葵 ほか


 注目は、『ゲド戦記』『ガラスの仮面』の寺嶋民哉さん、『魔法戦隊マジレンジャー』『花より男子』の山下康介さんの出演ですね。南林弥宏(なんばやし みつひろ)さんは宮川泰門下の作編曲家。

 コンサートのタイトルからわかるとおり、テーマは映画音楽です。『ゲド戦記』と『花より男子』はきっと演奏されるでしょう。参加ミュージシャンの中には、<石川晶とカウントバッファローズ>のギタリストだった直居隆雄さんの名も。『伝説巨神イデオン』や『超時空要塞マクロス』のBGMでギターを弾いている人ですよ!

 チケットはまだ残っているようですので、興味のある方、ぜひ足を運んでみてください。

 Jcaa2009a Jcaa2009b

2009年8月 8日 (土)

藤城清治・影絵劇の世界

 8月10~12日の3日間、CS放送の日本映画専門チャンネルで、藤城清治の影絵劇6作品が放送されます。この2月に放送されたプログラムの再放送です。

日本映画専門チャンネルの特集ページ

 放送作品は、「銀河鉄道の夜」「ブレーメンのおんがくたい」「泣いた赤鬼」「つるの恩がえし」「スカンクカンクプー」「海に落ちたピアノ」の6作品。

 なぜこのプログラムに注目しているかというと、サントラファンにも興味深い作曲家が関わっているからです。
 各作品の音楽は、

 「銀河鉄道の夜」:渡辺浦人(渡辺岳夫の父)
 「ブレーメンのおんがくたい」:西脇睦宏(オルゴールアーティスト)
 「泣いた赤鬼」:山下毅雄
 「つるの恩がえし」:いずみたく
 「スカンクカンクプー」:中田喜直
 「海に落ちたピアノ」:山下透(山下毅雄の次男)ほか

となかなか興味深いでしょう? 中田喜直は「夏の思い出」「ちいさい秋みつけた」などを書いた童謡・唱歌の名作曲家です。

 現在はDVDでも観れますが、昔は、わざわざ影絵を上映しているところへ観にいったものです。山下毅雄の音楽目当てに「泣いた赤鬼」を池袋で観ました。

 未ビデオ化のドキュメンタリー「光と影の詩人 影絵作家・藤城清治の世界」も放送されるそうなので、未見の方はこの機会にぜひ。夏休みのひととき、詩情たっぷりの影絵と音楽の世界にひたってみるのもいいと思いますよ。

藤城清治 つるの恩がえし/泣いた赤鬼 [DVD]
 音楽:いずみたくと山下毅雄のカップリング。

 : つるの恩がえし/泣いた赤鬼

藤城清治 銀河鉄道の夜 [DVD]
 ライヴ・ステージをハイビジョン撮影してDVD化。

 : 銀河鉄道の夜

ケロヨンと藤城清治ミュージカルの世界
 藤城清治創作活動60周年記念アルバム。過去にもバップから「ケロヨン・ソングブック」が発売されているが、これは初CD化となる朝日ソノラマ音源も網羅した決定版音楽集。木馬座のソノシート音源がはじめてCD化された画期的な2枚組です。

 : ケロヨンと藤城清治ミュージカルの世界

名作アニメ音楽に新風を! 「こんにちはアン」

 高梨康治さんが『フレッシュプリキュア!』に続いて、世界名作劇場『こんにちはアン』の音楽を担当すると聞いて、「いったいどういうこと…!?」と驚いてしまいました。

 高梨さんといえば、『地獄少女』『NARUTO 疾風伝』『怪 ~ayakashi~』『モノノ怪』『地球へ・・・』など、アクションやダークホラー、SF作品の印象が強いのです。ご本人も日ごろから「自分の音楽はへヴィメタ」と言われていますし、「世界名作劇場」とは結びつかなかったのですね。

 『こんにちはアン』は『赤毛のアン』の前日談です。アンがグリーンゲイブルズへ来るまでのエピソードを描いています。
 音楽担当は、高梨康治、水谷広実、藤澤健至の3人。この3人は同じ事務所に所属していて、『地獄少女』など多くの作品で共同して音楽を手がけています。いわば、息はぴったりのチーム。いったいどんな音楽ができあがるのが、興味津々でした。

 完成した音楽は、名作劇場らしさを出しつつも、3人の個性が発揮されたものになりました。
 メインで音楽を担当したのは水谷広実さん。水谷さんはドラマ『生徒諸君!』や『ドリーム☆アゲイン』などで人間ドラマに寄った音楽を書いているだけに、名作劇場のような作品はぴったりです。心情描写曲や自然描写曲が実にいいのですね。新たな名作劇場作曲家の誕生を感じさせる作品に仕上がりました。藤澤健至さんはもともとロックを得意とするギタリスト&作曲家ですが、今回はフィドルを使った曲などに新境地を開いています。そして、高梨康治さんは、『地球へ・・・』のときに研究したケルト音楽を取り入れて、民族音楽っぽい楽曲を提供。これがユニークな味わいを出していて、本作品の音楽の中でも異彩をはなっています。

 3人で音楽を担当したことが音楽性の幅を広げることになり、いい効果を上げていますね。作風も、それぞれの個性を出しつつも1つの作品として溶け合っている。全体の統一感を保つディレクター的役割は水谷さんが受け持ったそうです。

 『こんにちはアン』の音楽は、谷田部監督の意向で、100年前のカナダの雰囲気が伝わる素朴な音楽をめざしています。あえて編成を大きくせず、民俗楽器をふんだんに取り入れて、土着的な音楽を作っています。
 思えば、名作劇場でもこういうアプローチの作品ってこれまでなかったのですね。ユニークで聴き応えのある音楽になりました。

 サントラ盤は、水谷さんが選曲した曲を私が構成しました。曲名も私です。放映済のエピソードとシナリオをたよりに、小さなアンの物語をたどる構成にしてみました。ブックレットには、谷田部監督と3人の作曲家の座談会を掲載しています。作曲裏話は興味深いものになりました。

 昨年の『ポルフィの長い旅』はサントラ盤が1枚しか出ませんでした。今年はぜひとも2枚目を出したい。まだ未収録曲は残っているし、このあと追加録音もされているのですよ。今後も世界名作劇場を継続していくために、多くの人に買っていただけたらなぁと思います。

こんにちはアン オリジナル・サウンドトラック

 : こんにちはアン オリジナル・サウンドトラック

ヒカリの種/やったね♪マーチ [MAXI]
 主題歌シングル。歌うは宮崎アニメでおなじみの井上あずみ。

 : ヒカリの種

2009年8月 7日 (金)

辻 陽が手がける感動!?ドラマ「歌のおにいさん」

 辻 陽というと、「変化球作家」というイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。

 カルトな人気を持つミステリー・ドラマ『トリック』、筒井康隆原作を深田恭子主演で撮った『富豪刑事』、あるいは、本木雅弘がブラックジャックを演じたドラマスペシャル版『ブラックジャック』。個性的で強烈な印象の作品が思い浮かぶのです。

 そんな辻 陽が参加した2009年1月期のドラマが『歌のおにいさん』でした。
 主演は嵐の大野 智。テレビの幼児向け番組のバックステージを描いたユニークなドラマでした。でも、コメディかと思って観ていると、思わず感動してしまう場面が随所に登場する、意外な名作なのでした。
 辻さんの音楽は、コメディらしい誇張された曲から、繊細な感情を伝えるしっとりした曲まで、曲数は少ないながら充実したものでした。7月22日に発売されたサントラ盤には、その全曲を収録しています。

 アルバムの構成は辻 陽自身によるもの。私は、辻 陽インタビューと作品&音楽解説を担当しました。
 ドラマのサントラというと、解説書は見開き2ページだけの簡単なものしかついてない、というケースが多いです。「そんなサントラ盤ゆるせん!」と日ごろから思っている私は、ちょっと入れ込んでしまいました。ドラマ全話をチェックして作品解説・楽曲解説をしっかり書き、作曲家・辻 陽の作品という観点からも音楽解説を試みました。

 ネット上に、「ドラマのサントラをはじめて買ってみた」という、このドラマのファンの方の感想があり、「丁寧に作られていてよかった」と書いてくれていたのがうれしかったです。そう言ってもらいたくて作っているのですよ。

 また、辻 陽インタビューでは、辻さんのプロフィール・作品についてうかがっています。辻さんが自分の音楽歴を語ったテキストはこれまでなかったので、貴重なお話になりました。

 最後におわびですが、「ディストーション・ギター」を「ディストネーション・ギター」とする誤記がありました。辻さんに指摘されてしまいました。お詫びして訂正いたします。

歌のおにいさん オリジナル・サウンドトラック

 : 歌のおにいさん オリジナル・サウンドトラック

↓ドラマも名作です。

歌のおにいさん [DVD]
 全8話なので一気見してください。特典映像も豊富。

 : 歌のおにいさん DVD

2009年8月 6日 (木)

ゲーム音楽界のビッグネームが集まった「勇者30」

 ゲーム・サントラをはじめて手がけました。
 7月22日にマーベラスエンターテイメントから発売された『勇者30奏 ORIGINAL SOUNDTRACK』です。

 ゲームはPSP用ゲーム『勇者30』。「30秒以内に敵を倒す」というコンセプトで作られた対戦RPGです。
 PSPも持ってなく、ゲームもやらない私ですが・・・、今回は物語性が強いゲームということで、アニメ・サントラの方法論を持ち込むことにしました。
 サントラ盤は2枚組。ステージごとにブロック分けし、ゲームをなぞるというよりも、「ゲームのキャラクターが登場する仮想の物語を音楽でつむぐ」という感覚で構成しています。通して聴いたときの情感の流れを重視しました。

 このゲームの音楽で特筆すべきは、作曲家陣の豪華さ。ゲーム音楽界で名を知られたそうそうたる作家が参加しています。

 参加した作家は、『イース』の古代祐三、『ザ・キング・オブ・ファイターズ』の麻中"SHA-V"秀樹、『オメガファイブ』の岩月博之、『超兄貴』の葉山宏治、『メタルギアソリッド』の日比野則彦、『メタルスラッグ』の冷牟田卓志(HIYA!)、『サムライスピリッツ』の山田泰正(YAMAPY-1)、『龍虎の拳』の山手安生(TATE-NORIO)ら。
 また、特撮ドラマ『サイバー美少女テロメア』『千年王国III銃士ヴァニーナイツ』の音楽を手がけた桜庭 統や、アニメ『地獄少女』の水谷広実、藤澤健至も参加しています。
 そして、メインテーマにTHE ALFEEの高見沢俊彦を起用。ケレン味たっぷりの派手なテーマ曲ができあがりました。

 1つのゲームにこれだけの作曲家が参加するのは異例のこと。ゲーム・プロデューサーのこだわりの結果です。ブックレットにはプロデューサー・インタビューと作曲家紹介を掲載しました。
 ゲーム音楽作家が腕を競うコンピレーションとしても楽しめる1枚。ふだんゲーム音楽は聴かないという方(私のことだ)にも手にとっていただけたらと思います。

勇者30奏 ORIGINAL SOUNDTRACK

 : 勇者30奏 ORIGINAL SOUNDTRACK

↓ゲームはこちら。

PSP用ゲーム 勇者30

 : 勇者30

2009年8月 5日 (水)

歌手・田中公平の「ココロネ・ライブ 3rd」@南青山MANDALA

 ちょっと日が経ってしまいましたが、7月25日、南青山のライブハウス<MANDALA>で開催された田中公平ライブ「ココロネ 3rd」に足を運びました。

 MANDALAは年に何回か行くライブハウスで、ここで、minimumsや、まくらのそうし(大谷 幸)、鮎川麻弥さんのライブを聴きましたね。

 今回は、公平先生のピアノ&ヴォーカルに、ドラムス、ギター、ベース、サックス、パーカッションが加わり、さらにコーラスが4人入るという本格的なバンド編成。昨年7月の1stライブ会場(六本木スイートベイジル)よりステージは小さくなっていますが、より豊かでパワフルな音がしてましたよ。公平先生のMCもライブ向けに洗練されてきた印象を受けました。
 印象的だったのは、サックスの清水さん、パーカッションの益田さんがともに女性、コーラスにも女性が入って、女子率の高いステージだったことですね。

 演奏曲は、10月に発売が予定している『ココロネ Song 2nd』の収録曲中心。昨年発売された『ココロネ Song 1st』から「夏の夜空」「光の道」の2曲、『2nd』から「時空を超えて」「永遠の影」「大輪の花」「GIFT」「晴れた日の朝に」「truth」「君へ」「虹色」「この空も命も」の9曲が演奏されました。
 VOJA(Voice of Japan)のコーラスが圧巻。1部こそ1曲だけの参加でしたが、2部ではたっぷり参加。ゴスペルをベースにしたコーラス・グループだけに、ポップスやクラシック系のコーラスとはまた違うグルーブ感があります。
 また、2部冒頭のアニメコーナーでは、声優の伊倉一恵さんがゲストで登場。公平先生のピアノで『サクラ大戦』から「春風の恋歌」「希望」の2曲を歌ってくれました。さらに後半では、ココロネSongの作詞を担当しているAsukaさんが登場し、公平先生とともにアルバムには未収録の「飛行機雲」を披露してくれました。

 10月には『ココロネSong 2nd』発売、そして、11月1日には「田中公平 音楽家生活30周年記念コンサート」が予定されていて、イベント目白押しの公平先生。「アニメ音楽家」という枠をとりはらって、これからどんな活躍をしてくれるのか、目が離せません。


<set list>
1st set

  1. 虹色 (with VOJA)
  2. 時空を超えて
  3. 永遠の影
  4. 夏の夜空
  5. 大輪の花
  6. GIFT
  7. 光の道

2nd set

  1. 春風の恋歌 (伊倉一恵 with 田中公平)
  2. 希望 (伊倉一恵 with 田中公平)
  3. ビンクスの酒
     
  4. 晴れた日の朝に
  5. Truth (with VOJA)
  6. 君へ (with VOJA)
  7. 飛行機雲 (with Asuka&VOJA)
  8. 虹色 (全員&会場と)

アンコール

  • この空も命も
  • つばさ (with VOJA&伊倉一恵)

 Pf&Vocal:田中公平

 Cho:VOJA(Voice of Japan)
 Drs:芝 典生 Bs:島 秀之 Gt:安室裕之
 Per:益田和嘉子 Sax:清水利香 Cho/Vo:Asuka

 ゲスト:伊倉一恵


ココロネ song 1st 田中公平
 歌手としての1stアルバム。2ndは10月発売!

 :ココロネ song 1st

ビンクスの酒 [MAXI]
 ライブでも披露された『ONE PIECE』の挿入歌「ビンクスの酒」のMAIXIシングル。

 :ビンクスの酒

コミケ新刊情報

 コミックマーケット76用新刊、ようやく印刷所に入稿しました。

 今回は新刊2冊!

 『劇伴倶楽部 Vol.5 渡辺宙明 Around 1990 Works』と、
 『劇伴倶楽部 2009.08増刊 プリキュア・サウンドトラック大全』です。

 『渡辺宙明 Around 1990 Works』は、昨年冬発行した『渡辺宙明 1977-78 Works』に続いての渡辺宙明先生インタビュー本。
 今回は、あまり取り上げられることのない、1985年から1995年頃のOVA、イメージアルバム、ラジオドラマ作品などについてお話をうかがいました。
 登場する作品は、『戦え!! イクサー1』『学園特捜ヒカルオン』『レイナ 剣狼伝説』『学園特警デュカリオン』『流星機ガクセイバー』『特務戦隊シャインズマン』など。
 熱心な宙明ファンでも「この時期の作品は聴いてないなぁ…」という方が多いのではないかと思います。しかし、この時期の宙明サウンドにも、知る人ぞ知る名曲・傑作がたくさん埋もれているのですよ。
 「進化する宙明サウンド」の真髄を知っていただけたら、と思います。

 『プリキュア・サウンドトラック大全』は初の増刊号。これまでのインタビュー本と異なり、取材記事はありません。いわば資料集的な内容で、差別化のため「増刊号」としてみました。
 内容は、2004年の『ふたりはプリキュア』から2009年の『映画 プリキュア オールスターズDX』までの『プリキュア』シリーズ全作品について(ただし、『フレッシュプリキュア』をのぞく)、BGMリストとサントラ盤収録曲をまとめて、解説を加えたものです。
 BGMリストは各作品のサントラ盤解説書にも掲載していますが、今回、マスターテープから起こしなおしました。ですので、これまで表記されていない別ヴァージョンも網羅しています。また、『Yes! プリキュア5 GoGo!』のBGMリストは初公開になります。
 佐藤直紀さんが作ってきたプリキュア・サウンドの魅力を伝えるガイドブックになれば、と願って編集しました。

 出店は8月14日 東 O-43b <劇伴倶楽部>です。金曜日ですが、都合のつく方はぜひお越しください。

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