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2011年4月 9日 (土)

夢か現(うつつ)か「夢喰いメリー」の音楽

 帯には「夢現(ゆめうつつ)に謳う光と影――奥 慶一の世界」のキャッチコピー。『夢喰いメリー』のオリジナル・サウンドトラックは奥 慶一の集大成と呼ぶにふさわしい聴きごたえたっぷりの作品になっています。

 奥 慶一さんといえば、元スペクトラムのキーボーディストであり、高橋真梨子「桃色吐息」をはじめとする歌謡曲のアレンジや作曲、『夢戦士ウイングマン』『電磁戦隊メガレンジャー』『魔法のスター マジカルエミ』『おジャ魔女どれみ』『明日のナージャ』といったアニメ・特撮作品の音楽でおなじみ。『エスパー魔美』の主題歌「テレポーテーション-恋の未確認-」も奥さんの作曲でした。こうした作品歴からポップス寄りの作曲家という印象がありますが、実は東京藝術大学音楽学部作曲科で現代音楽を学んだ、ばりばりのクラシック出身の人なのです。修士課程にまで進んだものの、在学中から活動をはじめたスペクトラムの仕事が忙しくなって中退…という経歴の持ち主。クラシックのスコアも書ける一方、演奏家としても第一線で活躍してきたミュージシャンです。

 その奥さんがアニメ『夢喰いメリー』の音楽を担当すると知って、「これは面白そうだ」と私は期待に胸ふくらませていました。

 放映が始まって、期待にたがわぬ音楽のよさにしびれました。待望のサウンドトラックは3月2日に発売。いろいろあって、ようやくじっくり聴けました。

 冒頭に書いたように、奥 慶一さんの集大成的アルバムといえる1枚です。

 ときにバーナード・ハーマン風、ときに現代音楽風、民族音楽っぽい曲やシンセの響きを生かしたミステリアスな曲、ビートの効いたロックやリリカルな情感曲まで、スタイルも編成もさまざまでありながら、『夢喰いメリー』の世界をがっちり構築する芯の太い音楽に仕上がっている。

 『夢喰いメリー』のような題材であれば、シンセを主体にした不思議な感じの音楽で構成する、というアプローチもありえたと思うのです。しかし、奥さんの音楽は人間的で、生楽器の音が実に豊かに響いてくる。これは、「夢の世界だからこそ、リアルな生身の人間を通した音が必要なんだ」という奥さんの主張なのかもしれません。

 参加ミュージシャンにも注目です。
 ヴァイオリン・ソロは東京交響楽団のコンサートミストレスであり、『題名のない音楽会』にもたびたび出演している大谷康子。ギターにパール兄弟の窪田晴男。琵琶が日本音楽集団のメンバーで、伊福部昭音楽祭にも出演、『墓場鬼太郎』の音楽にも参加している首藤久美子。

 3分を超える長い曲が多く、映像音楽としても効果的でありつつ、単独の楽曲として聴きごたえがあります。

 メインテーマは6分を超える大作。大谷康子のヴァイオリンをフィーチャーし、スリリングな曲調で『夢喰いメリー』の世界を表現する。生楽器の響きを生かしたシンフォニックな曲です。
 2曲目「いざ!夢魔よ!!」は一転して荒々しいロック。これも4分を超える曲で、エフェクトのかかったエレキギターのうなりが夢魔とメリーの戦いを盛り上げる。
 3曲目「ストーリーテラー」も3分を超える曲。シンセの不安な響きが夢と現のはざまをたゆたうような気分にさせる。
 夢魔イチマのテーマ「イチマ」は首藤久美子の琵琶をフィーチャー。琵琶とフルート、パーカッションのかけあいが面白い効果を生んでいる。

 ほかにも、5分を超える「メリーと夢魔たち」、児童合唱による「エルクレスの歌」、リリカルな「ピュア・ラブ」、『明日のナージャ』の世界を思わせる「コミック・アッチェレランド」、ギターとパーカッションがうなる激しいロック「ザ・バトル」、シンセによる実験的な「夢現(ゆめうつつ)」など聴きどころが多い。

 「夢喰いメリー」と名付けられた曲は、次々と曲調が変化する幻想曲。生楽器とシンセが融合した、本作品らしいナンバーです。

 ラストには「FB(フルヘルボーダー)グリッチョ賛歌」をボーナストラック的に収録。劇中に登場する特撮ヒーロー番組の主題歌です。このヴォーカルが、奥さんが作編曲した『電磁戦隊メガレンジャー』の主題歌「電磁戦隊メガレンジャー」を歌った風雅なおとさん! 粋な人選と言うべきでしょう。

 ひとつだけ不満を上げるとしたらブックレットが寂しいこと。音楽がよいだけに作曲者コメントや音楽解説があるとよかったなぁ。

☆JASRACのサイトに奥 慶一インタビューが掲載されています。
 ⇒「作家で聴く音楽 奥 慶一

夢喰いメリー オリジナル・サウンドトラック

 : 夢喰いメリー オリジナル・サウンドトラック

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