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2012年12月 3日 (月)

冨田 勲「イーハトーヴ」交響曲

 11月23日に東京オペラシティコンサートホールで開催された冨田 勲「イーハトーヴ」交響曲世界初演公演に足を運びました。

 プログラムと順序が違って、1部1曲目は「山田洋次監督映画音楽メドレー」。『たそがれ清兵衛』『隠し剣鬼の爪』『武士の一分』『おとうと』の音楽メドレーです。叙情的なモチーフを奏でるソロ楽器が活躍する好演。冨田先生のメロディメーカーとしてのすばらしさを再認識しました。
 合唱が入って、2曲目は「交響詩ジャングル大帝~白いライオンの物語~」冒頭部分。おなじみのレオのテーマが入った、冨田先生の名刺のような作品。
 3曲目が大河ドラマ『勝海舟』。ジャジーなリズムに誘導されて雄大な曲想が展開するユニークなテーマ曲。生の合唱付きで聴けるのはぜいたくな体験でした。

 第2部が本日のメイン「イーハトーヴ」交響曲。
 以前もブログに書きましたが、「宮沢賢治を題材にしたシンフォニーを書きたい」というのは冨田先生の長年の夢でした。それが今回、「初音ミクと共演」という驚きの趣向つきで実現しました。今年80歳の冨田先生が、最新のテクノロジーを果敢に取り入れて曲づくりをしているのがかっこいい。
 「イーハトーヴ」は宮沢賢治自身が書いた曲やクラシック曲を引用しながら編み上げた作品。全編が冨田先生の新曲というわけではないのがちょっぴり残念ですが、冨田サウンド、オーケストレーションのすばらしさはたっぷり堪能できます。個人的には「風の又三郎」のダニー・エルフマンを思わせるファンタジックなアレンジが印象深かったです。

 そして、話題の初音ミクとの共演。
 公演プログラムが発表されると、まず話題になったのが初音ミクのことでした。話題作り?とも思われがちですが、今回、コンサートの中で冨田先生自身から初音ミク起用の動機を聞くことができました。
 「賢治童話に登場するカンパネルラや風の又三郎などのキャラクターは異次元界に住む存在。私の中では男女を超えたボーイッシュなイメージなんです。そんなキャラクターを体現できるのは初音ミク以外にない(大意)」と。ここまでは私が以前ブログに書いたことと同じで「うんうん」と思って聞いていました。そのあと冨田先生が「初音ミクには、幼くして亡くなった賢治の妹・トシのイメージも重ねているんです」とおっしゃったのを聞いて、「うわー、そうだったのか!?」と激しく感動。
 そうなんですよ。賢治の詩や童話のそこここには妹トシの残像が見え隠れするのです。若くして他界に移り住み、年を取らない存在になってしまった少女。そのイメージを初音ミクに重ねていたとは。思い至りませんでした。「冨田先生、参りました」という感じです。

 初音ミクが歌うしかけもなかなか手の込んだものでした。ふつうなら、あらかじめプログラミングされた歌があり、そのテンポ、リズムに合わせるためオーケストラもしくは指揮者がクリックを聴きながら演奏する、そんなやり方を考えるものです。実際、そういうコンサートはたくさんある。
 ところが今回は、大友直人さんの生の指揮に合わせて初音ミクが歌うという趣向。微妙なゆらぎのある生オーケストラの演奏に初音ミクのほうが合わせるという、たぶん世界でも例を見ない試みだったと思います。そのために、ステージ上にはシンセサイザーの装置が設置され、オペレータが3人登壇。キーボードを使って、指揮に合わせて音を出していました。
 詳しいしくみがわかってるわけではないですが、これはキーボードを使った「シンセの生演奏」とは違うのです。おそらく、フレーズごと、または音節ごとに歌詞のついた歌がプログラミングされていて、小節の区切りやメロディの区切りごとにタイミングを合わせて発音させていたのではないかと。
 で、初音ミクですから、歌うだけでなく映像もついているわけですよ。この映像も、ちゃんとオケや歌に合わせて踊ってるのです。音とは別のオペレータが操作しているのでしょう。デジタルのキャラクターとアナログの演奏を共演させる試み、裏では相当な苦労があったと思います。
 そんな意欲的な試みを、現代音楽の堅苦しい作品ではなく、宮沢賢治の童話を題材にした親しみやすい作品でさらっとやってのける。その柔軟さ、音楽づくりを楽しむ姿勢がやはりかっこいいなぁと思った公演でした。

 この交響詩、冨田先生はコンピュータなどを使わず、全曲手書きでスコアを仕上げたそうです。手書きによる創作のほうが作り手の心が伝わるような気がする、というようなことをおっしゃってたと思いますが、詳細はちょっと失念。来年発売のCDに収録されると思いますので、行けなかった方も楽しみにお待ちください。

 アンコールは、初音ミクが歌う「リボンの騎士」! そして、児童合唱団による「青い地球は誰のもの」。「リボンの騎士」はコンサートの途中から「やるといいなぁ」と期待していたのでうれしかったです。これも初音ミク踊りつきでした。

 最後に、話題を呼んだ今回の公演のもようが、さまざまな番組で取り上げられます。ぜひチェックしてみてください。

○2012年12月8日(金)深夜【12月8日(土)】0:55~1:39 NHK総合『MAGネット』
○2012年12月15日(土)16:00~(予定) TV東京系『Billboard JAPAN Music Awards 2012』
○2012年12月24日(月)予定 時間未定 東京MX『初音ミクのかたち』
○2013年1月10日(木)19:00~20:00 スペースシャワーTV『音楽ヒミツ情報機関M16』(再放送有)
○2013年2月3日(日)22:00~(予定) NHK Eテレ『ETV特集 冨田勲』

 以上は予定です。放送日・時間は番組ホームページ等でご確認ください。

イーハトーヴ交響曲 [Hybrid SACD]
 2013年1月23日発売!

 : アルバム・ジャケット
 ※画像はコンサートのポスターです。

<Set List>

第1部
 1. 山田洋次監督映画音楽メドレー
  『たそがれ清兵衛』~『隠し剣鬼の爪』~『武士の一分』~『おとうと』
 2. 交響詩ジャングル大帝(2009改訂版)~白いライオンの物語~ より
 3. 大河ドラマ『勝海舟』テーマ曲

第2部
 「イーハトーヴ」交響曲
  1. 岩手山の大鷲<種山ヶ原の牧歌>
  2. 剣舞/星めぐりの歌
  3. 注文の多い料理店
  4. 風の又三郎
  5. 銀河鉄道の夜
  6. 雨にも負けず
  7. 岩手山の大鷲<種山ヶ原の牧歌>

 引用曲:
  牧歌、剣舞、星めぐりの歌、風の又三郎 作詞:宮沢賢治/作曲:宮沢賢治、杉原泰蔵(風の又三郎)
  フランスの山人の歌による交響曲 作曲:ヴァンサン・ダンディ
  交響曲2番3楽章 作曲:セルゲイ・ラフマニノフ

 作曲:冨田 勲
 指揮:大友直人
 演奏:日本フィルハーモニー交響楽団

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